脳外傷による高次脳機能障害の認定方法

交通事故による障害認定では、「脳外傷による高次脳機能障害」と呼ばれ、脳の器質的な損傷を原因としている障害を示しています。

脳外傷による高次脳機能障害とは、自動車事故により脳が損傷されたために、記憶・記銘力障害、集中力障害、遂行機能障害、判断力低下などの認知障害や、感情易変、不機嫌、攻撃性、暴言・暴力、幼稚、羞恥心の低下、多弁(饒舌)、自発性・活動性の低下、病的嫉妬、被害妄想などの人格変化等を典型的な症状とする障害であり、仕事や日常生活に支障を来します。また、半身の運動麻痺や起立・歩行の不安定などの神経症状を伴うことがあるとされています。
自賠責保険の脳の損傷による障害に対する等級認定は、高次脳機能障害(器質的精神障害)と身体的機能障害(神経系統の障害=麻痺)とに区別したうえで、これを併合するのではなく、それぞれの障害の程度及び介護の要否・程度をふまえ、総合的に後遺障害等級を判断するものとされています。

損害保険料率算出機構の高次脳機能障害審査会

事故で脳外傷を受けた被害者が深刻な障害状態が残っているのに見落としや漏れ落ちを防止するための慎重な判定手続きとして、審査会を設けています。
MRIやCTなどの検査では異常所見がはっきりとせず、神経学的な検査をしても異常がでないという後遺障害診断書が出てきても、被害者の行動が明らかにおこしくなっていて、脳が傷ついた疑いのある事例では、被害者からの要求が無くても、より詳細な資料の収集が行われます。画像検査記録、診療した医師から精神症状の有無程度について回答を求め、親族に対しては、異常な精神症状が出ていないかなど日常生活の状態を質問する表が送付され回答を要請する扱いがなされます。
だからといって、異常の存在を裏付ける資料なしには審査会でも障害認定はできませんので、医療機関がどこまで詳細にデータを提供してくれるかや神経心理学的検査などの実施などが必要になりますので、詳細なデータ提供や該当する検査を実施してくれる医療機関を探す必要もあります。また、家族による日常生活報告の内容も判定に無視できな影響がありますので、異常の存在をいかに正確に伝達できるかも大切です。

自賠責保険の実務における認定体制

実務上は、高次脳機能障害が問題となる事案については、5つの条件に該当すると思われるものを特定事案として取り扱い、脳神経外科や精神神経科などの専門医を審査会委員とする高次脳機能障害審査会にて、医学的調査と社会的調査を行い、認定をしています。
5つの条件は、
・初診時に頭部外傷の診断があり、頭部外傷後の意識障害が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘症あるいは軽度意識障害が少なくとも1週間以上続いた症例。
・経過の診断書または後遺障害診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷等の診断がなされているもの。
・経過の診断書または後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する具立的な症状、あるいは失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやすい神経徴候が認められる症例、さらには知能検査などの各種神経心理学的検査が施行されている症例
・頭部画像上、初診時の脳外傷が明らかで、少なくとも3ヶ月以内に脳室拡大・脳委縮が確認される症例。
・その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例。

審査会ではさらに認定困難事案として、意識障害がない事案、CT/MRI等の画像資料上、脳室拡大・脳委縮が認めれらない事案、または器質的な脳損傷が認められない事案、被害者が幼児・児童である事案、事故受傷と高次脳機能障害との間に相当因果関係に疑義のある事案、時効が問題となる事案については、本部審査会にて審査・認定が行われます。

労災における認定基準

自賠責保険における後遺障害の等級認定は、原則として労働者災害補償保険(労災)における障害等級認定基準に準じて行われています。

労働者災害補償保険における認定基準

第1級の3

「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級の3とする。

以下の a又は b が該当する。

a 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介

護を要するもの

b 高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの

第2級の2

「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、随時介護を要するもの」は、第2級の2とする。

以下の a b 又は c が該当する。

a 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介

護を要するもの

b 高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発

作性意識障害等のために随時他人による監視を必要とするもの

c 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できる

が、一人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必

要とするため、随時他人の介護を必要とするもの

第3級の3

「生命維持に必要な身の回りの処理の動作は可能であるが、高次脳

機能障害のため、労務に服することができないもの」は、第3級の3とする

以下の a 又は b が該当する。

a 4能力のいずれか1つ以上の能力の全部が失われているもの

例1. 意思疎通能力が全部失われた

「職場で他の人と意思疎通を図ることができない」場合

2. 問題解決能力が全部失われた

「課題を与えても手順通りに仕事を全く進めることができず、働くことができない」場合

3. 作業負荷に対する持続力・持久力が全部失われた例

「作業に取り組んでもその作業への集中を持続することができず,すぐにその作業を投げ出してしまい、働くことができない」場合

4. 社会行動能力が全部失われた例

「大した理由もなく突然感情を爆発させ、職場で働くことができない」場合

b 4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの

第5級の1の2

「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほかは服することができないもの」は、第5級の1の2とする。

以下の a又は b が該当する。

a 4能力のいずれか1つ以上の能力の大部分が失われているもの

問題解決能力の大部分が失われているもの

「職場での他の人と意思疎通を図ることができない」場合

「1人で手順とおりに作業を行うことは著しく困難であり、ひんぱんな指

 示がなければ対処できない」場合

b 4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの 

第7級の3

「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」は、第7級の3とする。

以下の a又は b が該当する。

a 4能力のいずれか1つ以上の能力の半分程度が失われているもの 問題解決能力の大部分が失われているもの

「1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、時々助言を必要とする」場合

b 4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの 

第9級の7の2

「通常の労務に服する事はできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2とする。

高次脳機能障害のため4能力のいずれか1つ以上の能力の相当程度が失われているものが該当する。

問題解決能力が相当程度失われているものの例

「1人で手順とおりに作業を行う事に困難を生じることがあり、または助言を必要とする」場合  

第12級の12

「通常労務に服する事はできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの」は、第12級の12とする。

4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているものが該当する

第14級の9

「通常労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの」は、第14級の9とする。

 MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳障害があることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためにわずかな能力喪失が認められるものが該当する。

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