高齢者の交通事故の特徴

交通事故による死者数が減少していくなかで、65歳以上の高齢者の交通事故死者数に占める割合は増加しています。平成29年度の統計では、人口10万人当たりでは、25~64歳までの死者数が2.9人であるのに対し、65歳以上は5.8人とおよそ2倍です。
事故に遭われた状況でも著しい特徴があります。歩行中および自転車乗車中の事故による死亡者数の60%以上を高齢者が占めています。さらに、高齢者の歩行中の事故は、自宅から500m以内で、薄暮時間帯や夜間に集中し、特に夜間では、自動車(加害者)から見て右からの高齢者の横断中の事故である点です。
右からの事故は、高齢者は車が来ることは分かっていても「まだ遠い、渡りきれる」と判断し、道路を横断し始めることと、夜間の対向車線には車のライトが届き難く、運転手からは歩行者が発見するのが遅れがちになる要因があるものと思われます。また、高齢化社会の中で高齢運転者数が年々増加傾向にあり、加害者としての高齢者の存在も見逃せない点です。

高齢者が被害者になった場合の諸問題

高齢者には加齢からくる諸事情(健康面、体力面で劣っていること、既往病等を有している場合)をどのように評価するかの問題があります。比較的軽微な事故であっても死亡や重篤な後遺障害が残存する場合や、治療期間が蔓延化する場合、既往病や既存障害と交通事故にて受傷した内容との因果関係が認否など、損害として治療関係費、介護費用費などの範囲や額が問題となります。
自賠責保険の実務上は、事故と受傷、死亡、後遺障害との因果関係の有無の判断が難しい場合の損害については、積算した損害額が保険金額に満たない場合には積算した金額から、保険金額以上となる場合は保険金額から50%の減額を行っています。

事故と後遺障害の因果関係

損害賠償に期待される因果関係の役割は、損害賠償の範囲を、加害者、被害者ともが納得できる常識的な範囲に制限することです。つまり、判断の枠組みはともかく、加害者がいくらの責任を負うのか、被害者はいくらの賠償を得られるのかということになります。交通事故の実務上は、損害論が争点になります。
しかし、高齢者の交通事故につていは、その障害が事故によるものなのか、それとも事故とは無関係に事故後に発症したのか、あるいは事故によって重い後遺障害が残存したのか、無関係なのかが争点になる事が多いのが特徴です。それは、高齢者の場合は、治療期間が遷延化したり、比較的吉備な事故であっても死亡や重篤な後遺障害が残存するなど、若年層では予想しがたい経緯を辿って重篤化し、損害が拡大する事態に及ぶことが多いからです。
自賠責保険では、自賠責保険の支払に関しては、損害保険料率算出機構自賠責損害調査センターにおいて損害調査が書面によりなされますが、自賠責保険の支払基準は、障害による損害、後遺障害による損害、死亡による損害と区分されているだけですし、支払基準についても法令の定めにより公表されいます。

事故における素因減額(裁判基準)

素因とは、被害者の心的要因および身体的要因(既往病等)を表します。裁判においては、損害の拡大について被害者の素因が寄与している場合には、過失相殺の考え方を類推して損害賠償額を減額することが認められています。素因とか寄与という言葉は裁判用語になります。
素因には心因的要因と身体的要因に分けられます。
心因的要因を理由に減額された判例は、事故内容や受傷内容が軽微であるにもかかわらず治療が長期化しているなどですが、素因減額が認められるためには、問題となる要因が通常人のそれに比較して常軌を逸したものであることと判断されていると思われます。
身体的要因では、治療の長期化や、治療場面において既往病の治療に重点が起かれたいる、既往病が事故を契機に発症しているや既往病が競合して結果を重大にしているなど、医学的な事柄を含めての判断になったと思われます。
治療の長期化、後遺障害の残存、あるいは死亡という重大な結果になった場合の裁判では、事故との相当因果関係や素因減額が争点になっていることが多いのが特徴です。

自賠責保険への被害者請求と障害等級認定

高齢者の損害賠償額のほとんどが、裁判で争うまでもなく、自賠責保険への被害者請求にて損害の全額が回復される場合が多いのも特徴です。
自賠責保険の支払い基準は、法令にて定められています。示談交渉で提示される損害賠償額の項目と内容を確認して、自賠責の限度額内である場合は、被害者請求をすることも有効になります。
後遺障害の等級認定においても、高齢による事が判断基準ではありませんので、後遺障害等級認定をされて、等級が認定された場合に、被害者請求として自賠責保険へ後遺障害の慰謝料等を請求することができます。
自賠責保険の損害調査所での障害事案での調査所要日数は98.1%が30日以内です。受傷後に相手方の任意保険会社より、治療が長期化することが想定される場合は、本人の保険利用を求められる場合も多く、月を単位にしてそのつど自賠責保険に仮渡金を請求し、その後症状固定と診断された場合には、医師に後遺障害診断書の作成を依頼して、自賠責保険への本請求と後遺障害等級認定を申請することが有効な場合が多くあります。

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