過失相殺と過失割合

過失相殺とは、損害賠償額を算定するにあたって、被害者側にもなんらかの責任、つまり過失があるときには、その賠償額を減少させることをいいます。当事者間の利害を調整し、損害の公平な分担を図ろうとするのが、過失相殺制度です。
この規定は民法によります。民法は社会生活の中で生じた利害の調整を目的とする法律です。過失相殺に該当する条項は、722条の2項になります。
民法709条(不法行為による損害賠償) 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法722条(損害賠償の方法及び過失相殺) 第417条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。2.被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
民法417条(損害賠償の方法) 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

損害賠償上の過失相殺

損害賠償の算定公式は、加害者の一方的な責任だけではなく、被害者にも過失がある場合に、その過失割合に応じて損害賠償額を減額することになります。
たとえば、被害者にも30%の過失があるとすれば、受け取れる損害賠償額は30%を差し引いた70%分になります。

過失割合と過失相殺

つまり、被害者側の過失割合は損害賠償上は、受取り額の減額を意味します。
交通事故訴訟における事故態様についての争いは、ほどんどの場合、過失相殺の成否、過失割合をめぐるものになります。裁判で過失相殺をするかどうかは、裁判官の裁量にまかされていますが、迅速、公平な処理のための一般的・客観的な基準が求められています。交通事故の損害賠償はその9割が示談による解決です。つまり、被害者と加害者が裁判所の手を借りず話し合いによって賠償責任の有無、その金額、支払方法などを決定しています。示談が成立すると示談書を作成しこれおを公正証書にすれば、裁判による判決と同じ効力があることになります。

過失相殺の類型(裁判基準)

過失相殺については過失割合の認定が難しく、最終的には裁判所で決定してもらうしかないのが実情です。個別事情や各種の修正要素を勘案すると数値が変わることもあります。類型別の参考値もしくは目安になります。

・車対歩行者

車と歩行者の過失相殺では、横断歩行者とそれ以外の場合を分けて考えます。横断歩道上は道交法によって歩行者が強く保護されています。歩行者の横断が信号機等の表示よって禁止されていない限り、原則として過失相殺はなされません。歩道と車道の区別がある道路で歩道上の事故などが該当します。
横断歩道外の事故では、横断歩道が付近に存する場合には、横断歩行者はその横断歩道を横断しなければなりません。それにもかかわらず横断歩道がいを横断した場合には30%程度の過失相殺がなされます。横断禁止の場合では50%程度になります。


・車対車 

自動車同士の場合は、ほぼ両者に同質の注意義務が課されられていますので、各々過失の程度を過失割合をもって示し、他の事情を加味して決められています。基本的には、交通標識や法令による優先関係、道路の広狭による優先関係、左法優先の原則が原則になります。
類型としては、交差点か以外か、信号機の有無、直進・左折・右折、T字路、進行方向などと、個々の状況や事情から過失割合が算出されています。



・単車対四輪車

原則的には単車も四輪車も運転手に課せられる注意義務は同一ですが、一般的に過失割合ないし過失相殺率が単車側に10~20%程度有利になる単車修正がされています。四輪車と単車が衝突した場合に、単車側により大きな被害が生じやすいのは明白ですので、弱者保護の立場から両者の責任の負担に反映されています。
類型としては車対車とほぼ同様です。

・車対自転車 

自転車は道交法の車両には当たりますが、車両同士の事故としてあまりに両者の他人に与える危険性に程度の差がありますので、車と歩行者の場合に準じて過失相殺率を考えることが妥当と思われます。歩行者よりやや重い責任があるとの判断が一般的です。
しかし、自転車は他の車両から発見しにくい場合や、歩行者に比べて速度が速いこともあり、走行の仕方によっては事故につながり易い危険性がありますので、発見が困難な走行や2人乗りなどの場合には、過失が加算されます。

被害者側の重過失

被害者側に重過失=7割以上の過失がある場合には、自賠責保険での減額があります。また、被害者側の過失割合が10割ある場合には、加害者には全く責任がなく被害者としての自賠責保険の保護は受けられません。

過失相殺と損益相殺

交通事故の被害者に、何らかの落ち度があれば過失相殺されます。着用が義務付けられているシートベルトやヘルメットを不着用の場合には、それにより被害が発生したり、あるいは拡大したと考えられるような時は、被害者側にも過失が認められる余地があり、過失相殺される場合があります。
労災保険や健康保険との損益相殺、交通事故の被害者が労災保険給付や健康保険法による保険給付(療養の給付、療養被、傷病手当金等)を受けると、これも損益相殺の法理により、損害額から控除されます。

過失相殺率認定の実務書

これまでも多くの過失相殺についての基準が公表されてきましたが、現実に発生する交通事故は千差万別で、基準どおりの事故はほとんどありません。典型例から一応の目安になる程度ですが、一般原則として・弱者優先・広路優先・左方優先が基本になります。過失相殺率は最終的には個々の事案毎に裁判所に決定してもらうしかありませんが、過去の判例等をもとに実務書として発表されています。
・民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準(通称 赤い本) (財)日弁連交通事故相談センター東京支部
・交通事故損害額算定基準(通称 青本) (財)日弁連交通事故相談センター
・民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(別冊 判例タイムズ) 東京地裁民事交通訴訟研究会編

 

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